はじめに
トランスポゾン(転移因子)は、多くの生物でゲノムの大半を占める、静かなる主役。進化、生物機能、疾患研究など、あらゆる場面で注目されていますが、その解析には専門知識と情報解析の腕前が問われます。とくにゲノム解析に不慣れな方には、どこから手をつければよいのか分からず戸惑うこともあるでしょう。
このサイトは、トランスポゾンの専門家はもちろん、生物を扱うさまざまな分野の研究者が、必要に応じて立ち寄れる“道しるべ“となることを目指して開設しました。
構成はシンプルに4つ――用語集リンク集FAQ問い合わせフォーム
問い合わせフォームでは、トランスポゾンに関連したゲノム配列解析(非モデル生物を含む)、エピジェネティクス解析、発現解析、転移検出解析などのご相談を受け付けています。
最適なワークフローは生物種にも時代にも左右されます。本サイトも、私たちの研究の進展とともにアップデートを重ね、少しずつ育てていきたいと考えています。

用語集

トランスポゾン

ゲノム上の位置を移動する転移性、もしくは可動性の遺伝要素(塩基配列)。転移因子とも呼ばれる。バーバラ・マクリントックは、その発見により1983年にノーベル生理学・医学賞を受賞している。多くの生物がゲノムにトランスポゾンを多コピー内包し、ヒトゲノムに至っては約50%を占めるなど、ゲノム構造の多様性やゲノムサイズに大きな影響を与えている。また、その転移性を利用して、遺伝学や分子生物学分野では、遺伝子を導入するためのベクターや、突然変異体を作製するための変異原として利用される。

機動性DNAエレメント

ゲノムの大部分を占める「非遺伝子」領域のうち、ゲノムの機動性を誘発するポテンシャルを有するDNA配列。トランスポゾン、ゲノムに内在化した性ウィルス、VDJ配列や受容体遺伝子などの反復配列など。

ゲノムの機動性

ゲノムDNA自体やクロマチン高次構造が刺激に応答して、柔軟で機動的に変化すること。VDJ組換えや染色体削減はその最たる例である。エピゲノム変化などにより誘発されるクロマチン高次構造の変化も含まれる。

表現型可塑性

同じ遺伝子配列であっても、生物個体が環境条件などに応じてその表現型を変化させる能力のこと。一般的には同−DNA配列である場合を意味するが、本領域では広義に捉え、遺伝子をコードする配列が同一であれば、イントロンやプロモーター、エンハンサーなどにおけるトランスポゾンの挿入多型、染色体の逆位、転座などにより誘発される表現型変化も含む。

コンセンサス配列

トランスポゾンのファミリーまたはサブファミリーごとの標準的・平均的な配列。複数座位のトランスポゾン配列をアライメントした後、サイトごとに最も頻度の高い塩基を選択することで作成される。トランスポゾンが転移した当時の配列を近似的に復元したものと考えることができる。このため、ゲノム中にはコンセンサス配列と同一の配列が実在しない場合が多い。一般的なゲノム中のトランスポゾンのアノテーションでは、トランスポゾンの全ファミリーのコンセンサス配列ライブラリとゲノム配列との比較がおこなわれる。

データベース

  • Dfam
    ヒトと実験生物のトランスポゾン配列集積にはじまり、現在ではそれに限らない種のトランスポゾン配列を集積している。リピートライブラリは無償で配布されている。
  • RepBase
    Genetic Information Research Institute (GIRI)が運営するトランスポゾンに特化したデータベース。トランスポゾンのコンセンサス配列、分類、そのトランスポゾンを持つ生物種等の情報が有償で配布されている。

分類ツール

  • RTClass1(ウェブサーバ)
    GIRIが提供する非LTR型レトロトランスポゾン(LINE)の分類ウェブサーバ。
  • Censor(コマンドライン)
    RepBaseを運営するGIRIが開発した伝統的なリピート分類ソフトウェア。ウェブサーバではRepBaseデータベースの配列に対して相同性検索が可能。

検索ツール

  • RepeatMasker(コマンドライン)
    伝統的かつ最も普及したリピート検出パイプライン。対象生物種に適したリピートライブラリを入力することが重要で、事前情報の少ない生物種の場合にはRepeatModelerなどをかけることが必須。

リピートモデル構築ツール

  • RepeatModeler2
    調べたい生物種の全ゲノム配列に基づいて、散在性反復配列について種類ごとにコンセンサス配列を導出し、それらをまとめたいわゆるリピートライブラリを生成する。リピートライブラリファイルはRepeatMaskerなどのゲノム上のリピート検出プログラムをかける際の入力ファイルとして使用できる。
  • EDTA
    RepeatModeler2のようにリピートライブラリを生成する。
  • REPET
    TEdenovo, PASTEC, TEannotを統合した歴史あるパイプライン。実行環境の準備が容易ではない。

一体型ツール

  • EarlGrey
    RepeatModeler2とRepeatMaskerを組み込んだ、一体型トランスポゾン検出プログラム。

リピートモデル修正ツール

  • TEtrimmer
    2024年に登場した、RepeatModeler2やEDTAが出力したリピートライブラリの自動キュレーションパイプライン。
  • MCHelper
    TEtrimmerと同様に、2024年に登場したリピートライブラリを自動でキュレーションするパイプライン。

その他のリンク

  • TEHub
    TE Hubコンソーシアムが運営するトランスポゾン関係の情報集積ページ。
  • DNA入門
    かずさDNA研究所が提供する遺伝学の基礎知識

FAQ

トランスポゾンとは何ですか?

転移性、もしくは可動性の遺伝要素で、ある染色体上の位置から、別の位置へ移動する能力を持つ、比較的小さなDNA配列です。

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